13.グリーンイグアナ
(1) 分類、品種
グリーンイグアナ(Iguana iguana)はイグアナ科に属すトカゲです。イグアナ科は600種を超す大きな科です。最近、この科を数科に分ける研究が発表されていますので、いずれはそちらに移行するでしょう。単純にイグアナといった場合、イグアナ科のトカゲを指す場合と、グリーンイグアナを指す場合があります。グリーンイグアナはアメリカ大陸のメキシコからブラジル南部、パラグアイまでと、西インド諸島に分布します。以下の「イグアナ」は「グリーンイグアナ」を指します。
(2) 形態、生理、習性
グリーンイグアナは、小さい時は緑色でかわいらしく、つい飼いたくなりますが、大きくなると、小さい時とは違い見事な容貌になり、なかなか魅力的です。餌が植物質なので飼い始めは簡単です。寿命は飼育下で20年近く生きたものがありますが、10年以上生きることは、そう多くはありません。全長1.8m位になります。
(3) 飼育上必要な設備と機材
グリーンイグアナは樹上性のため、ケージは他のトカゲ類より広さ、高さを必要とします。水入れはイグアナが入れるくらい大きいものを用意し、水の量はイグアナが入ってもこぼれない程度にします。イグアナは体が大きくなるので便で飼育設備内を結構汚します。樹上性ですから、床だけでなく、とまり木にも壁にも便が付きます。イグアナは自分の便で体が汚れるのをまるで気にしません。その汚れた尾をふって抵抗されると嫌になります。ケージを清掃するには水洗いが一番です。ですから、排水を十分考え、排水孔を付けてください。温度は25〜30℃位にしますが、温度差がつけられるのなら夜は22〜23℃位にしましょう。日光浴はさせたほうがよいでしょう。室内なら日当たりのよい所に置いてください。梅雨明けから9月まで、可能なら屋外飼育が望ましいでしょう。ただ元気がでると野性が戻るのか、また馴れにくくなってしまうようです。健康か馴れか、どちらをとるか難しいところです。
(4) 飼い方のポイントと注意点
餌は子供の時は昆虫類も食べますが、基本的には植物質を食べます。動物質は成長初期か体力が衰えているとき以外は、あまり与えない方がよいでしょう。植物質なら家庭で食べるものでよいと思われがちで、またよく食べて成長しますが、ここに落とし穴があります。野生のイグアナが食べているのは野生に生えている草や木の葉、果実などです。あまりカロリーの高いものは食べていません。野菜や果物では高カロリーですし、含まれているものも違っています。フライ(「Iguana : Guide for successful captive care.」Fredric L. Frye著/1995年/Krieger Pub Co 1995年)によると、与える餌にはカルシウムがリンの2倍以上の比率で含まれていないと、カルシウムがイグアナの体から流出して失われてしまうのだそうです。イグアナの飼育が難しいのは、このバランスがうまく取れないせいでしょう。野草・木の葉を中心に野菜・果物を少し加えていくやり方がよいでしょう。フライの本には、主食ではありませんが、餌の一つとして、冷凍のミックスベジタブルや、豆腐もあげられています。給水は体がつかるくらいがよいでしょう。床、壁、樹上と移動できるよう、枝を配置します。
イグアナはあまり人を恐がりませんから、掃除していると寄って来て出ようとします。勝手に出させて後で戻すか、つまんで向きを変えたりします。無理やり捕まえてはいけません。掃除の時は、窓際での日光浴もよいでしょう。個体によっては、飛び出して逃げるものもいますので、こういう個体には十分気を付けて出さないようにしてください。
グリーンイグアナの性質は比較的温和で、上手に扱ってやれば、よいペットになります。動物を扱う場合、こちらが構えると動物も構えます。最初は逃げるかもしれまんが、気長に少しずつ触れてください。怯えている時は深追いしてはいけません。グリーンイグアナは、すぐ驚いて走りだします。走りだしても、ぶつからないだけの広さがあればよいのですが、なかなかそうもいきません。機会あるごとに触れて、餌もピンセットから摂るように続けます。顎の下に触れられるようになればあとは時間だけです。片手を前足の間に差し込んで少し体を持ち上げます。繰り返しながら、今度は後足です。こうして続けていきますが、気を付けなくてはいけないことがあります。まず爪が結構鋭いということです。ほんとうに小さいときはよいのですが、少し大きくなると、押さえたりする時に暴れると、私たちの肌には簡単に引っかき傷ができます。大きくなるとおとなしくても、体に這い上がらせたりすると、やはり引っかき傷ができます。これはイグアナにとってどうしようもないことなので、飼う側が自衛しなくてはいけません。厚手のシャツを着たり、革手袋を着けたりしてください。嫌なことをしたら、口を開けて咬もうとします。歯は小さいですが鋭く、かみそりのように切れます。咬まれないように撤退します。ここで殴ったりするとだんだん性格が悪くなっていき、果てはどうしようもなくひねくれた個体になるかもしれません。根気と我慢が必要です。
また、雄は大きくなると気が荒くなり、他に雄がいればけんかをはじめます。逃げる広さがあればよいのですが、逃げきれないと大けがをします。したがって、雄は分けて飼うしかありません。触るのも避けた方がよいかもしれません。これは個体次第です。飼育しているだけなら、迷惑とか危害とかは、本質的にはありませんが、逃げだしたら、大きいし、不安をあたえることは間違いありません。絶対に逃がしてはいけません。
個体識別は少数なら、傷痕など、その個体のもつ外観の特徴で区別できますが、数が多いようでしたらマイクロチップを注入することを検討してください。
(5) 健康と安全の管理
主な病気と予防としては、風邪・肺炎が挙げられ、飼育温度が低いとかかりやすくなります。爬虫類の飼育は、温度管理ができれば半分は成功したといってよいでしょう。季節の変わり目には加温が難しいことがあります。風邪などのほか皮膚病も起こりやすい病気です。
また、グリーンイグアナは、すぐ驚いて走りだし、壁などにぶつかって口先をつぶすことがよくあります。その他、金網のケージでは金網に爪や指をひっかけ、爪や指先を脱落するようです。
火傷についても注意が必要です。暖房用の電球や床暖房で起こります。かなりの低温にセットしておいても起こることがあります。
(6) その他特記事項
グリーンイグアナはサイテスの附属書IIに属し、養殖されたものが輸入されています。
グリーンイグアナは値段も安いし、餌が植物質なので、簡単に飼い始められます。しかし動物が安いわりには、暖房など設備に金がかかり、すぐ大きくなりますし、病気にもなりやすく、結構やっかいです。よく逃がして世間を騒がせたりもします。グリーンイグアナの飼育は、一見簡単なようですが、トラブルも多く、普通の家庭向きの動物ではなく、動物園や水族館のような施設に任せるべきです。