10.ナミヘビ類
(1) 分類、品種
ナミヘビ類はナミヘビ科のヘビで、1,500種以上のヘビが含まれています。ネズミヘビ〈ナメラ(Elaphe)〉、キングヘビ(Lampropeltis)、ゴーファーヘビ(Pituophis)、インディゴヘビ(Drymarchon)などの無毒蛇は、ペットスネークという言葉に代弁されるように、品種改良が行われ、もはや野生から捕獲せずとも累代繁殖した子孫のみで必要な個体数の生産がまかなわれている、きわめて稀な爬虫類群です。"
これらの蛇は、適度な大きさの飼育ケージと新鮮な水ならびに餌としてのげっ歯類が用意できれば、特殊な機材すら必要なく容易に繁殖まで楽しめます。
(2) 形態、生理、習性
ナミヘビはおおむね50pから2m以内のサイズの種類がペットとして一般的です。
いかにも蛇らしい普通の特徴を備えており、顎は大きく開き、大きな餌が飲めます。手足が無く体が細長いので、餌は胴体でしめつけて窒息させつつ、餌の体そのものを細長く締め上げて飲み込みやすくします。俗にいわれるように骨をバラバラに砕くというのは迷信です。
昼に活動するものもいれば夜に活動するものもいますが、おおむね飼い主の都合で餌を食べてくれますので、是が非でも日光浴が必要で世話のサイクルが動物中心となるカメとは大きく異なります。
餌は、ポピュラーなペットスネークの場合、100%げっ歯類で足ります。餌用に養殖された、様々なサイズのマウスやラットが冷凍状態で販売されていますので、これだけを与えておけば問題ありません。
巣穴をもつ種類がほとんどなので、隠れられる場所が必要です。また、寿命は野生でアオダイショウ12年、フロリダキングスネーク12年、インディゴスネーク11年6ヵ月という記録があります。
(3) 飼育上必要な設備と機材
ヘビは爬虫類の中でも、場所をとらずにコンパクトに飼育できるといわれています。たとえば、飼育ケージの長径はヘビの全長の3分の2、短径はトグロの直径の1.5倍もあればよい、といった具合です。1mちょっとのヘビでも無理をすれば60pの規格水槽で生涯飼育することができます。
ただし、これはあくまでもヘビに遠慮してもらっているに過ぎず、たとえば、国産ヘビで最も頻繁にペットにされるアオダイショウなどは、環境抵抗を受けやすく、狭いケージで育成すると野生で見られるような大きな個体にはなかなか成長しません。途中から大きなケージに移し替えるとみるみる成長して、体格すら違ってきます。狭い部屋でたくさんのヘビをコレクションしたり、どんどん繁殖させていきたい人はスペースの関係でよりコンパクトな飼育を余儀なくされますが、たとえば1匹をかわいがり鑑賞したい人は、大きなゆとりあるケージに、木や岩などを配してゆったりと飼育してやるとよいでしょう。
ケージの大きさは、W(ヘビの種としての最大全長の倍)×D(ヘビの全長)×H(ヘビの全長)くらいにしてやると、ヘビ本来の美しい体型に育ち、種としての興味深い行動も観察できるようになります。
ナミヘビにはペット化されている種類だけでもきわめて多くの種類が含まれ、中には、高温を嫌い、日本の夏を越せない種類もいます。一方で、しっかりと保温して飼育しないと消化不良や感染症で死んでしまう種類もいます。冷房か保温か、飼育する種類にあわせてしっかり設定してやりましょう。
ヘビはよく水を飲む生き物です。また、暑いとき、脱皮のとき、体表にダニが付いた時など、全身を水に漬けることがあります。ヘビがひっくりかえせないくらいの適度な重さがあって、中でトグロをまいても水がこぼれない程度の容量のある水入れを用意しましょう。
巣穴で生活するヘビは、トグロがすっぽり収まるくらいの隠れ家を必要とします。シェルターともいいますが、市販のものや、植木鉢を削ったものを用意します。極端に樹上性に依存した種類では、天井付近に巣箱をつけてやると、掃除のときにヘビを驚かせずに済むので便利です。そういった種類には木登り用の横枝を渡してやり、その枝にケージの外からスポットライトをあててやると、食後に腹を温めにきます。それができない場合は、ケージの底に一部、マットヒーターを敷いて、腹を温めて消化を助ける場所をつくります。食後の低温はヘビの寿命を縮めます。
コンパクトに大量に飼育したい人は、引き出し式のケージ、ラックを用います。市販のものもありますが、サイズに限りがあるので、日曜大工で自作することになります。プラスチック製の押入れ用収納ケースの桶の部分だけを用意して、それがすっぽりおさまるような本棚風の枠をつくります。通気穴をあけたケースを差し込んでおけば、ラックの棚板がケースの天井として機能し、ヘビは逃げられず、世話をするときには適宜引き出すという仕組みです。ケースのサイズが色々と選べますので、ヘビの大きさに合っていて、なおかつコンパクトに収納できる飼育施設が作れます。ケースの底には必要ならマットヒーターを敷きます。
(4) 飼い方のポイントと注意点
餌はマウスを解凍して、38℃くらいの温度にして与えます。30p以上ある長いピンセットで、餌をヘビの前に持っていくか、ケージに横たえて放置します。
ヘビが大きな餌を飲み込めるからといって、無理矢理大きな餌を与えてはいけません。概ねヘビの頭部と同じか、やや大きい程度の大きさのマウスをヘビの食欲にあわせて好きなだけ与えます。腹がはちきれんばかりに大量に食べた場合は、ヒーターで十分に暖をとらせます。ヘビは消化能力に種差や個体差が大きく、あくまで自分の飼育している個体がどのくらい食べてどのように消化するのか、よく観察しましょう。確実に消化された、密度の濃い、少量の便となって排泄されるように給餌の量と間隔を決定します。
脱皮の前は餌を食べません。目が白くなり、色がくすみ、やがて目がもとどおりの色になると、しばらくして脱皮がみられます。脱皮前に無理に捕獲したりして皮膚に傷がつくとそこから脱皮に必要な水分がうばわれて脱皮不全となります。脱皮前にも食べるような個体であっても、やはりこの時期はそっとしていてやるのが無難です。
なお、脱皮前は一時的に湿気を要求しますので、ミズゴケの入った容器などを設置して脱皮不全を予防します。
餌は、マウス類だけで問題なく、たまに、爬虫類用のビタミンサプリメントを添加します。ヘビは匂いに敏感なので、サプリメントはゼラチンカプセルにいれて、マウスの皮膚の下に忍ばせます。消化力の弱い個体を飼育している場合、マウスの尾と手足は除去し、背中の皮も除去してやると、消化の助けになります。また、毛のはえていないピンクマウスのような小さいサイズの餌を与えることも消化不良の予防には有効です。
給餌と排便のペースを一定に保ちながら、適宜掃除をします。床材は新聞紙を幾重にも重ねたものが最適で、汚れた紙から順に捨てていくことでヘビにストレスを与えることなく管理できます。
水はなるべく頻繁に綺麗なものと交換します。
ヘビは餌と飼い主の指を区別ができない場合があります。餌やりには必ず長いピンセットを使い、マウスの臭いが手につかないように注意します。もしかまれたらテレホンカードなどを指と顎の間に差し込んでゆっくりとはがします。無理に引きはがすと飼い主のけがも悪化しますしヘビの顎もこわれます。
ヘビは脱走する生物です。1度や2度は必ず逃げるといっても過言ではありません。
ケージは逃げないような工夫をして、逃がさないような管理をすることはもちろん、飼育ケージのある部屋からヘビが外に出ないように飼育部屋の入り口がしっかり閉まるようにします。ヘビが逃げたら、まず、ミズゴケの入ったシェルターなどを部屋の四隅にしかけ、喉がかわいたときにもぐりこむように仕向けます。このようなトラップは念のため、飼育室の外にもしかけ、定期的に見回るとよいでしょう。
ヘビは一般社会において存在自体が迷惑と思われているといっても過言ではありません。集合住宅などで、ヘビが隣家に飼われていると知っただけで眠れない人もいます。脱走したヘビが自宅に侵入してきたら生きた心地がしないでしょう。動物病院への通院も同じです。犬や猫を抱いた飼い主と隣り合わせで順番待ちをする際、中身が見えなくても、患者がヘビだと知ったとたんに気絶する犬の飼い主がいるかもしれません。迷惑防止という観点からいえば、飼育そのものが迷惑となりうる生物であることを自覚し、社会との調和に努めましょう。
(5) 健康と安全の管理
ヘビは適切な環境と餌を整えやすいペットなので、めったに病気はしませんが、湿度不足による脱皮不全や湿度の過多による皮膚病などは頻繁にみられます。
大きすぎる餌、与えすぎ、食後の低温での消化不良も要注意です。油の浮いた下痢便や嘔吐がみられたらまず餌やりの方法を見直すべきです。
複数での飼育は避けるべきです。餌をめぐって、2匹がからみあい、どちらも命をおとすことがあります。
養殖個体中心のペット爬虫類であるにもかかわらず、伝染病の進入が後をたちません。コバエやダニ、水入れの共有が飼育施設内での感染に一役かっている様子です。新参個体の検疫も大切です。野生のヘビなどはむやみに持ち込まないようにしましょう。
(6) 特記事項
餌の冷凍マウスは家庭用の冷蔵庫とは別に管理しましょう。不衛生です。
ナミヘビ類のなかには「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(特定外来生物法)により特定外来生物に指定されているものがあります。